EIRの活用3パターンとは?

 
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EIRを活用する目的や課題には、大きく3つのパターンが存在します。本記事では、EIR活用の3パターンについて、その概要と事例を紹介します。
 
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EIRとは

客員起業家(EIR:Entrepreneur in Residence)とは、イノベーション創出に向けて課題を有する企業が、起業準備を行う者や、新規事業開発・スタートアップとの協業等に関する知見を有する者を、雇用・業務委託等を行い、自社のイノベーション創出に向けた課題を解決する取組です。
起業家にとっては、起業準備期間のセーフティネットや、起業経験者の新たなキャリアとして機能します。企業にとっては、社内には無い経験・ノウハウを活用し、新規事業創出や社内改革を推進します。
EIRの活用は、起業の増加及びオープンイノベーションの促進に繋がることが期待され、注目され始めています。
 

なぜ、EIRは注目されているのか?

日本でも起業に関するコンテンツ、投資額は、年々増えています。
 
しかしながら、アメリカには487社(50.8%)もユニコーン企業があるのに対して、日本のユニコーン企業はわずか6社(0.6%)です。
 
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参考:The Complete List Of Unicorn Companies – CB Insights
 
起業数で比較しても、政府が公開している2018年時点の国別開業率は、アメリカが9.1%、日本が4.4%であり、大きく差がついていることが分かります。
 
 
そうした要因は、大きく断じれば「スタートアップエコシステムが違う」と言えますが、それを因数分解すると、その中に『企業の経営戦略と人的資本のギャップ』、『起業家のセーフティネット不足』の2つの要因が出てきます。
 
 
簡単に言えば「企業に事業創出できる人材が不足している」「起業家が思い切って挑戦できる環境が不足している」ということです。
こうした課題に対して、両者を一度に解消する手段として”企業が事業創出のノウハウを持った起業家をEIRとして活用する取組が注目され始めてきています。
 

EIR活用制度の起業家視点のメリット

では、EIRを活用することにどのようなメリットがあるのでしょうか。
 
起業家側のメリットは明確で、企業からの雇用・委託等により保障される給与等が、起業準備期間のセーフティネットや、起業経験者の新たなキャリアとして機能することです。
 
日本の現状として、起業経験を活かした中途採用事例はまだ少なく、その点も思い切って起業に挑戦することをためらわせてしまっている要因です。EIRの活用が定着してくと、例え起業が失敗したとしても、次のキャリアがあるということで、起業のリスクを引き下げていくことができます。
また、通常起業家が容易にはアクセスできない、大企業のリソースを活用した事業創出を行えることもEIRの特徴となります。

EIR活用制度の企業側のメリット

一方企業側としては、EIRを活用する目的や課題が、①起業支援・事業領域開拓型②シーズ等活用型③社内変革推進型と、大きく3つのパターンに別れます。

類型A:起業支援・事業領域開拓型

まずは、『外部人材を活用して、新たな事業領域を開拓したい』という企業における課題・EIR導入のメリットを紹介します。この類型では、副次的に開拓不十分な市場に対するVC・投資機関の投資機会増加も期待されます。
 
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【類型A】企業の課題・EIR導入のメリット
  • 課題
    • 社内ではリスクが取れず、ずっと調査ばかりで事業化に繋がっていかない。
  • メリット
    • 客員起業家が、トライ&エラーによる事業領域の開拓を強力に推進する。
 
 

類型B:シーズ等活用型

次に『社内シーズ・リソースを外部人材のアイデアと結び付けより一層活用したい』という企業における課題・EIR導入のメリットを紹介します。
 
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【類型B】企業の課題・EIR導入のメリット
  • 課題
    • R&Dの結果の知的財産が利益を生まないまま数多く放置されてしまっている。
    • 顧客基盤や土地・施設など潤沢なリソースをただ抱えているだけになってしまっている。
  • メリット
    • 自社のシーズ・リソース・販路を客員起業家に開示することで、それらを更に活用することが出来る。
 

類型C:社内変革推進型

最後に『起業・新事業創出の経験者に社内の新規事業創出を先導してほしい』という企業における課題・EIR導入のメリットを紹介します。
 
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【類型B】企業の課題・EIR導入のメリット
  • 課題
    • 社内コンペ等で事業案まではでてきても、事業を育てる方法が分からない。
    • 既存事業部が新規事業部の活動に協力的でなく、オープンイノベーションが進まない。
  • メリット
    • 新規事業開発に必要なスキルをもった起業家に”内部”に入ってもらえる。
    • 新規事業開発のプロセスや意思決定基準などの新規事業ノウハウを仕組み化、風土変革が起きる。
 

EIRを活用したい方へ

アメリカや中国のようなスタートアップエコシステムは、一朝一夕で構築出来るものではなく、複数の手段を用いていく時間をかけて構築していくものとなります。EIRもそうした数多ある手段の一つとなります。
 
ただ、私たちは日本の起業数を増やしていく上で、企業と連携したセーフティネットの構築は非常に重要な要素であると考え、『客員起業家(EIR)活用に係る実証事業』に取り組んでいます。9者の実証事業者が進めるEIR活用の取組のナレッジを取り纏め、EIR活用の手引き(仮)を作成・公開予定です。(2023年3月頃公開予定)
 
今後、上記手引き以外にもEIRに関するコンテンツを配信していきますので、どうぞ下記アカウントをフォロー頂ければ幸いです。